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小さい頃からキャトル・セゾンが大好きだったというcafe文化研究家の飯田美樹さんから届いた本とコラム
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はじめに

お客様からのお手紙は、とてもありがたく、また勉強になります。
今から16年ほど前、中学生だった飯田美樹さんから、
初めてお便りをいただきました。
一生懸命、質問がつづられていました。
「嬉しいな、最年少記録だ。ちゃんと答えなきゃ。」と思いました。
「今、パリに住んでいます。」
「日本に戻り、学校に在籍しながらカフェを運営しています。」
何年か経つと、飯田さんは近況を知らせてくれました。
そして先日、「パリのカフェの本を出しました。結婚して、子供も生まれました。」
と言って本を持ってきてくれました。
小学校の頃に、フランスの雑貨に興味を持った飯田さんが、
どんな経験をされ、パリのカフェで何を思ったのか、
何回かのコラムに分けて書いていただきたいと思います。
皆様にも、学生のころを思い出しながら、
お時間のある際に読んでいただけたら嬉しく思います。

キャトル・セゾン代表
前川睦夫

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メッセージイメージ

飯田美樹さんからのメッセージ

 

 幼い頃からパリに憧れ、キャトル・セゾンに通っては前川社長にお手紙まで書いてしまった私が念願のパリに留学できたのは21歳の時でした。当時の私の大学の交換留学協定先でパリにあるのはパリ政治学院という学校だけでした。たまたま受かったその学校に、「パリに住みたい」私は通うことになったのです。ところがフタをあけてみればパリ政治学院は政治のエリート養成学校。来るところを間違えた!!と気付いたものの、時すでに遅し。フランス語もできず政治にもとんと興味を持てない私はすぐに落ちこぼれとして扱われ、学校の方針にも環境にもまるでなじめず強い葛藤がうまれていきました。

 そんな日々泣きそうな私を救ってくれたのが、パリのカフェでした。もともとカフェや喫茶店に憧れていた私が通った学校は、サルトルやボーヴォワールが通ったというカフェ・ド・フロールの目と鼻の先。サン=ジェルマン=デ=プレのガイドを見るといつもフロールやドゥ・マゴが載っているけれど、どうしてカフェが観光名所になるのだろう?ぼんやりとそんなことを気にかけながら、私自身もカフェに通って、手紙を書いたり日記を書いたりしているうちに、パリのカフェは日本のカフェとは違った機能があることに気がつきました。

 暖をとる、咽をうるおす、一休みする、何かを書く、トイレに行くという機能の他に、パリのカフェで私が経験したのは偶然の出会いというものでした。一人淋しくこのカフェに通った私も、隣席になった人との出会いや会話を通して何度救われたことでしょう。

 丁度パリのカフェは面白いなと思っていたころ、フランス革命がカフェから始まったという話や印象派の画家達がカフェに集ったという話を耳にしました。その時私の中で何かがピンと来たのです。「そうだ!カフェだ!」ただカフェ好きだった私と、環境活動に関わってきて、何かが生まれる熱い場づくりをしてきた私の中で、カフェと社会変革という二つのテーマがふっと結びつきました。
 
 この一見何の関係もなさそうなテーマは、ヨーロッパのカフェについて知れば知るほど深く関連があるように思え、日本に帰って調べるようになってからも謎は深まるばかりでした。どうして世界を変えていった人達や小説家、芸術家たちはこぞってカフェに集まったのだろう?世の中には沢山の場があるというのに、何故こうも影響力のある運動とカフェは密接に関わっているのだろう?カフェについて書かれたどんな本を読んでも私の疑問は解明されず、7年ばかり研究を続けることになりました。
 
 カフェという場はただお茶を飲みに行くだけの場ではありません。ドリンクはカフェの入場料で、カフェはメニューには書かれていない沢山のものを提供してくれる場所なのです。この本を読んで多くの人がカフェの魅力に気付き、困ったときに「そうだ、カフェに行こう」と思ってくれれば、そしてカフェが多くの人を救う場となり、いつの日か日本のカフェからも何かが生まれていったらいい、そんな想いで『Caféから時代は創られる』を書き上げました。書店でこの本を見かけたら、ぜひ手にとってみていただければうれしく思います。

caféから時代は創られる著書イメージ

■飯田美樹さんの著書
「caféから時代は創られる」
いなほ書房
2625円 発売中

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